美容室・若手のビジネスセンスを磨く教育現場

ヘア・スキンケア、ヘッドセラピー、ネイルをはじめ15種類以上のメニューを展開する福岡県春日市のサロン『Rassic』。
高い再来店率と60%を超える店販比率を誇り、トータルビューティーサロンの成功例として注目されています。現在サロンにはオーナーである田中貴子代表のほか4名のスタッフが在籍し、その高いリピート率と店販比率に貢献。

教育は明確な正解がない難しい分野。同サロンの教育現場を覗くと、そこには若手スタッフのビジネスセンスを磨く仕組みがありました。

田中貴子(たなか たかこ)

1971年1月生まれ。福岡県春日市出身。

プロフィール

福岡美容専門学校卒業後、都内のサロンに勤務。多方面での活動を経て2004年福岡市内にてRassicを開業。2009年、現在の所在地である春日市に移転。独自のヘッドセラピーにも多くのファンを持ち、県内外で講習会を主宰している。

技術・接客・もうひとつ必要なのは?

『Rassic』ではキャリアアップシステムとしてアシスタントに6段階のランクを設けています。より高いランクへ進み、スタイリストデビュー(※同サロンでの役職名はジュニアスタイリスト)するには、各段階で用意されている次の3科目のテストの全てをクリアしていく必要があります。

  1. 技術試験(・シャンプーやカットをはじめデビューに必要な技術)
  2. ロールプレイング(・お客様への説明や提案等、接客の実技)
  3. レポート(・形式自由)

レポート試験が育むビジネスセンス

上記1と2の試験ついては、内容や程度の違いはありながらも、多くの美容室で求められるカリキュラム。『Rassic』ではこれらに加え、各段階で異なるテーマのレポート発表を必須としているのが特徴です。その内容は『ヘアケアの大切さ』や『カウンセリングとは?』、『店販』、『セットアップのTPO』といったもの。

Q.レポート試験はどのような形式で行われているのでしょうか?

A.形式は自由です。どのように発表するかは私(田中代表)ではなく、スタッフ自身が決めています。これまで論文形式、プレゼンテーション形式で発表が行われてきました。

実際のレポート試験の様子。この日はプレゼンテーション形式で「店販」について、お客様の購買動機に焦点を当てた内容を展開。

Q.ロールプレイング(説明や提案等の実技)とは別にレポート試験を設けた理由について教えて下さい。

A.ロールプレイング試験で求められる「説明や提案等の能力」は日々の仕事でお客様と接していくことで、ある程度上達するものだと考えています。

しかし、アシスタントの時期から「数字」に対しても高い意識を持っていてほしい。レポートではテーマに沿って「サロンの売上や成長に貢献できるアイディア」を現実のデータに基づいて発表して貰っています。もちろん、バランスの取れた人材であることは大前提なので、先ほどお話した他2つの試験もレポートと同じ度合いで重視しています。

こちらは論文形式。データからニーズを推測し、新規メニュー/店販の導入計画を発表。試験とはいえ早期からベンチャーマインド溢れる提言ができるのは、若手スタッフにとってもやりがいに繋がる。

トータルビューティー化に際して、幅広い視野で美容室づくりを考えてきた田中代表。レポート試験を設けることで、これからのサロンを担うスタッフ達にも「自分が働く美容室が繁栄していくためには、何が必要だろう?」と日々考える習慣ができあがります。次ページでは、この教育システムが実際のサロン運営にどのように作用しているのか、お話を伺いました。

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